君に捧げる一途な愛
「シャッフルランチの時と今日。普段、全く男性の話題すらしないのに、小笠原課長のことは自ら話してくれるんだよ。もしかして、自覚なかった?」
由香はクスリと笑う。
そう言われてみれば、私は他の男の人の話はしたことがない。
でも、小笠原課長の話は聞かれてもいないのに由香に喋っていた。
その事を自覚したら、顔がみるみるうちに赤く染まる。
私の気持ちは智美さんにも気づかれ、由香にもバレている。
私は誤魔化すようにシャンディーガフを飲み干した。
「志乃、今はあの子の邪魔は入らないんだからね。せっかく芽生えた気持ちを大切にした方がいいよ」
由香が諭すように言う。
私はあの時のことを思い出しただけで、苦々しい気持ちになる。
でも、あれは過去のこと。
「うん、そうだね……」
「そうだよ。志乃が我慢することなんてないんだから」
「ありがとう」
私は由香の言葉に励まされ、救われている。
「志乃、何飲む?まだ決まってないなら先に注文するけど」
「うん、先にどうぞ」
「すみません、ジンバックひとつお願いします」
由香がバーテンダーに注文したとき、背後でカランとドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
オーナーの落ち着いた声が耳に届いた。
なかなか決まらず、メニューを眺める。
「私もジンバックお願いします」
「かしこまりました」
「由香と同じにしちゃった」
「由香?」
背後から由香の名前を呼ぶ男性の声がした。
二人でその声の主を見ると、由香が「お兄ちゃん」と呟いた。