君に捧げる一途な愛
そこに立っていたのは由香の兄の幸也だ。
意志の強そうな眉に奥二重の目、少し癖のあるダークブラウンの髪の毛をサイドに流している。
百八十センチ近い長身で、学生時代はバスケをしていたので、ほどよく筋肉のついた身体つきだ。
確か、外資系の会社に勤めていると由香が言っていた。
由香も身長が百六十八センチで、学生時代はバレーをしていた。
パッチリとした二重に、モカブラウンのショートボブ。
この髪型は学生時代から変わっていない。
今日はノーカラーの白のブラウスにネイビーのパンツスーツ姿。
由香は長身だから、パンツスーツがよく似合っている。
幸也くんと由香は高身長の美形兄妹だ。
確か、年齢が五、六歳離れていた気がする。
幸也くんの視線が私に向いた。
「志乃ちゃんも一緒だったのか」
「ご無沙汰しています」
軽く会釈した。
由香の家に遊びに行ったとき、幸也くんには何度か会ったことがある。
頭がよくて運動が出来る人だったのを覚えている。
「えー、まさかお兄ちゃんに遭遇するとは思わなかった」
「それはこっちのセリフ。というか、このバーは俺が教えてやったんだろ」
「そうだけどぉ」
会話を聞いているだけで、この兄妹の仲の良さが伝わってくる。
「ジンバックです」
目の前にジンバックのグラスが置かれた。
「お兄ちゃん一人?」
「いや、もうすぐ友達が来る」
幸也くんがそう言った直後、カランとドアベルが鳴り、扉から姿を現した人を見て由香が驚きの声をあげた。
「お兄ちゃんの友達って小笠原課長なの?」
私はその声に反応し、振り向いた。