君に捧げる一途な愛
「幸也、遅れてすまない」
「いや、俺も今来たところ」
「そうか、って木下さん?」
幸也くん越しの私に気づいた小笠原課長は驚いたように目を見開いた。
ちょっと待って、こんな偶然なんてある?
小笠原課長と目が合い、心臓がバクバクと音を立てる。
「お、お疲れさまです」
私は慌てて会釈した。
「あー、そういえば政宗は今、由香や志乃ちゃんと同じ会社に勤めていたんだったな」
「幸也、彼女たちと知り合いだったのか」
「ああ、そこのショーとボブは俺の妹の由香、隣に座っているのが由香の友達の木下志乃ちゃんだ」
幸也くんが私たちの関係を簡単に説明する。
「秘書課の望月さんか。なるほど、幸也の妹だったんだな」
「お疲れさまです。いつも兄がお世話になっています」
由香がその場に立ち、頭を下げる。
前から思っていたけど、こういうときの由香の立ち居振舞いは秘書のそれだ。
「いや、こちらこそ」
「お知り合いなら席は隣にしますか?」
私たちのやり取りを見ていたオーナーが気を遣ってくれる。
「いえ、妹と隣で飲むとか気まずいので遠慮しときます」
幸也くんが苦笑いする。
「そうですか。でしたら、お好きな席へどうぞ」
オーナーが空いている席に座るように促していた。
幸也くんと小笠原課長は、先に来ていた男性客から二席あけた席に座った。
「ねぇ、うちのお兄ちゃんと小笠原課長が友達だなんて驚きなんだけど」
由香が声をひそめて言う。