君に捧げる一途な愛
「ホントだよね。世間は狭いって感じるよ」
こんなことってあるんだ。
衝撃が大きすぎる。
「でもさ、お兄ちゃんも気が利かないよね。せっかく小笠原課長がいるのに一緒に話ができないじゃん」
「いやいや、幸也くんの判断は正解だよ。話なんてなに話すって言うのよ」
「そりゃあもう、恋愛がらみでしょ」
「バカなこと言わないでよ」
私と由香は周りに聞こえないように声をひそめて喋る。
「えー、こんなチャンス滅多にないよ。小笠原課長に彼女がいるのか聞いてみるのもアリなんじゃない?」
「全然アリじゃないよ。そんなの聞かなくてもいいし、この話は終わりにしよう」
実は小笠原課長本人から彼女はいないと聞いている、なんて私の口からは言えない。
それでなくても、私たちのコソコソ話が聞こえていたら困るし。
「つまんないの。いろいろ聞いてみたいけど、お兄ちゃんが邪魔だしなぁ。あ、ミモザください」
「あっ、私も同じものを」
私もすかさず注文する。
いつも行っている居酒屋よりお酒が美味しい気がして、二人ともいつもよりお酒の量が増えていた。
「そうだ、来月に同期会するの聞いてる?」
「聞いた聞いた。遠藤さんと牧野くんが幹事をするんでしょ」
「うん。博美ったら、彼氏が欲しすぎて同期の男性陣に誰かいい人がいないか聞いて回るって言ってたよ。冗談だと思うけど」
出会いがないと嘆いていたので、藁をもすがる気持ちなんだろう。
でも、本当に聞いて回ったらドン引きレベルだけど。