君に捧げる一途な愛
「遠藤さんならやりかねないんじゃない?彼女、見た目に反してアグレッシブだから」
私は思わず苦笑いした。
博美は黙っていればクールビューティー。
ひとたび口を開くと止まらない、恋に貪欲な子だ。
「そうだ、九条さんと付き合うって言うの、他の人には黙っといてもらっていい?」
「それはもちろんだよ」
「同期会で茶化されるのも嫌だし、しばらくはそっとしてもらいたいからね」
由香の本気度がうかがえる。
将来のビジョンが見えるというぐらいだもん。
大切に愛を育みたいんだろう。
「由香、九条というのはどういうヤツなんだ」
不意に低く不機嫌な声が聞こえ、私と由香は顔を見合わせた。
その声の方に視線を向けると、幸也くんがいつの間にか移動してきて由香のそばに立っていた。
「お兄ちゃん、盗み聞きしたの?」
「そんなことはしていない。たまたま話し声が聞こえたんだ」
「もー、最悪。途中からお兄ちゃんがいるのを忘れて油断してた」
由香は小さく舌打ちした。
私はというと、完全にお酒のペース配分を間違えたみたいで、二人の言い合いを聞きながらうとうとしていた。
「何が最悪なんだ。で、九条というのはどういう奴なんだ」
「同じ会社に勤めている人。仕事も出来てすごくいい人で優しくてイケメン」
「騙されているんじゃないのか」
「失礼なことを言わないでよ。本当に九条さんはいい人なんだから」
「九条って海外事業部の?」
望月兄妹の会話に小笠原課長が割り込んだ。