君に捧げる一途な愛
「はい、そうですけど」
「幸也、心配することはないぞ。海外事業部の九条は妹さんの言う通り、仕事も出来て真面目ないい奴だ」
「小笠原課長!」
まさかの小笠原課長のフォローに由香は嬉しそうに目を輝かせる。
「政宗、知っているのか?」
「ああ。トリリンガルで優秀な人材だ。確か、数年前まで海外勤務で会社の事業拡大にも貢献したと聞いている」
「そうなのか」
「お兄ちゃん、小笠原課長お墨付きの人なんだから、難くせ付けないでよ」
幸也さんはシスコンだ。
妹が可愛くて心配だったんだろう。
でも、九条さんは本当に仕事の出来る人なんだ。
小笠原課長があんな風に言うなら間違いはないよね。
由香、いい人に出会えてよかったね。
「で、いつ家に連れてくるんだ」
「馬鹿じゃない。お兄ちゃんは気が早いのよ。まだ返事してないんだから」
由香は呆れたように言う。
幸也さん、妹と一緒は気まずいとかいいながら、今は由香の隣に陣取ってる。
私は左手で頬杖をついてカラになったグラスをじっと見つめる。
あー、眠たいな。
そろそろ帰ってベッドの上で眠りたい。
「由香、私そろそろ帰るわ」
「私も帰るよ。お兄ちゃん、せっかくだから奢ってよ」
「それは別にいいが」
「やった!志乃の分もお願いね」
「いえ、そういう訳にはいきません」
私はバッグの中から財布を取り出す。
「志乃ちゃん、いいよ。いつもうちの由香と仲良くしてくれてるし」
私に財布をしまうように言う。