君に捧げる一途な愛
「こういう時は甘えちゃえばいいんだって」
「幸也さん、ありがとうございます」
私はお礼を言って、スツールから降りた。
自分ではちゃんと地面に立ったつもりだったのに、足がふらついた。
「志乃っ」
慌てて由香が私の腕を掴んで支えてくれた。
足が覚束ないぐらい、私は酔っていた。
「ごめん、由香。ありがとう。もう大丈夫だから」
「全然大丈夫じゃないでしょ。そんなフラフラで帰れるわけないじゃん」
「ちょっと眠かったから、つまずいただけだよ」
「それがダメなんでしょ。一人で帰らせれないよ。私が送るから」
由香が私の身体を支え直す。
「俺が志乃ちゃんを送るよ。由香はタクシーで帰れ」
そう言って幸也さんが立ち上がる。
「お兄ちゃん、いいの?」
「ああ。悪いが政宗、先に帰るわ」
「いや、俺が木下さんを送る。お前、彼女がいるだろ。いくら妹の友達だからって二人のところを見たら疑われるぞ」
え?
今、小笠原課長はなんて言った?
「そうだよ、お兄ちゃん!伊織さんを悲しませてもいいの?」
なぜか、由香が同調する。
「しかし、」
「しかしもかかしもないよ。逆に考えてみて。伊織さんが他の男の人に家まで二人きりで送ってもらったらどう思う?恋愛関係ではないと言われて納得できるの?」
「出来るわけがないだろ」
「ほら、そういうこと!だから、小笠原課長が志乃を送ってくれるっていうならお任せしてもいいんじゃない?」
「そうだな。政宗、頼んでもいいか」
私がぼんやりしているすきに会話が進んでいた。