君に捧げる一途な愛
「そうか。次からは気を付けた方がいいよ」
「はい。すみません」
何度目かわからない謝罪をする。
ふとテーブルを見ると、ビールの缶が開けられていた。
小笠原課長は私を送ることになったから、バーでお酒を飲むのを中断させてしまったのかもしれない。
申し訳なさでいっぱいだ。
「あんなに酔って無防備だと悪い男に持ち帰られるぞ。まあ、この部屋に君を連れてきた俺が言えた義理ではないが」
酔って無防備?
私は覚えていないけど、なにかをやらかしたのかもしれない。
「いえ。本当に何から何まですみません」
「もう謝らなくていいよ。俺が心配なだけだから」
小笠原課長はそう言ってビールを飲んだ。
「俺はもう少し飲んでから寝るけど、木下さんは……って眠くないか」
「そうですね。ちょっと目が覚めちゃいました」
「お酒でも飲むか、と言いたいところだけど今日はもうやめておいた方がいいな」
「私もそう思います」
これ以上、失態を重ねるわけにはいかない。
少し眠ったからか、酔いも覚めている。
「水ならあるんだが」
「水をお願いしてもいいですか?」
「わかった」
小笠原課長は立ち上がって、キッチンに行き冷蔵庫の中から冷えたペットボトルを持ってくる。
私はそれを受け取り、キャップを開けてさっき使っていたグラスに注いだ。
テーブルを挟んだ向こう側で小笠原課長がビールを飲んでいる姿を私はじっと見つめる。
これって夢じゃないよね。
小笠原課長が目の前にいるなんて信じられない。