君に捧げる一途な愛

「さっき幸也にヘタレだと笑われたよ。食事ぐらい早く誘えと。お前が躊躇している間に誰かに取られもいいのか。後悔する前に動けとカツを入れられた」

小笠原課長は苦笑いする。
あのバーで幸也くんとそんな話をしていたなんて知らなかった。
まあ、席が離れていたし小声で話していたら聞こえないよね。

そんなことより、小笠原課長の話は、うっかり勘違いしてしまう内容に聞こえるのは私の気のせいだろうか。

「それに、比嘉部長にもまだ食事に誘ってないのかと呆れられた。ホント、いい年した男がなにやっているんだかって感じだが。今日、まさかあのバーで木下さんに会えるなんて思ってもいなかった。こんな偶然があるんだと驚いたと同時に、このチャンスを逃したら駄目だと思った」

小笠原課長もこの偶然には驚いたんだ。
私だって、立て続けに小笠原課長に会えるなんて想像すらしていなかった。

偶然も重なれば必然になる、という言葉を聞いたことがある。

あのバーに同じ時間に気になっている人と会えるなんてことある?
今日も会えるべくして会えた、と思ってしまうのは私が酔っているから自分の都合のいいように考えてしまうのかな。

そんなことを思っていたら、『君に伝えたいことがある』と言って小笠原課長は背筋をピンと伸ばす。

なぜか私もそれにつられて姿勢を正した。
真剣な眼差しが私を捉え、目を逸らすことが出来ない。
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