君に捧げる一途な愛
小笠原課長とは部署も違うし、明確な接点はなかった。
だから、小笠原課長にとって私は同じ会社の顔見知りの社員ぐらいの位置づけでしかないと思っていた。
先週から小笠原課長と話す機会が増えた。
無口だの堅物だのといった博美の言葉は、私が一緒に過ごした小笠原課長からは欠片も感じられなかった。
優しい一面だったり、面倒見がよかったり、私の作ったお弁当を美味しいと言って残さず食べてくれた。
この短期間で、小笠原課長のことばかり考えるようになった。
「一緒に過ごしてみて改めて木下さんのことが好きだと思った。もっと一緒にいたいし、君のことを知りたいと思っている。こんな年の離れたおじさんに言われても嬉しくないと思うが」
苦笑いする小笠原課長に私は力強く否定した。
「小笠原課長はおじさんなんかじゃありません!とても素敵な人です。ご迷惑ばかりかけている私が言えることではないのですが、この前は一緒に過ごせて楽しかったし、もっと……」
私は慌てて手で口を押えた。
勢いで『もっと一緒にいたいです』と口走りそうになっていた。
まだ全部言ってないからセーフだよね。
「もっと、何?」
「いや、あの、それは……」
どうにか誤魔化そうとするけど、いい言葉が見つからない。
小笠原課長は手を緩めてはくれない。
「比嘉さんから情報はもらっているけど、木下さんは恋人はいないよね?」
「はい」
私は頷いた。