君に捧げる一途な愛

「もしかして、俺の気持ちは迷惑かな?」

「いえ、全然迷惑なんかじゃありません。でも、小笠原課長のお気持ちは嬉しいんですけど……私にはもったいなくて」

一歩踏み出したい。
強い自分に生まれ変わりたい。
好きだと言われて嬉しいけど、ある不安が付きまとい心に影を落とす。

「何か不安なことがあるのか?」

私の心を見透かしたように言う。
小笠原課長はこんな私のことを好きだと言ってくれた。
その気持ちに真正面から向き合わないといけないと感じた。

「ちょっと嫌な気分にさせてしまうかもしれないんですけど、話を聞いてもらっても大丈夫ですか?」

私は意を決して小笠原課長に確認した。

「君のことが知れるなら構わない」

「分かりました」

私はグラスに入っている水を飲んで喉を潤した。
小笠原課長にどう思われるか怖かったけど、私の過去を口にした。

「あまり自分のことを話すのは苦手だし、うまく説明できるか分からないですけど。私、学生の時に告白されて付き合った人に裏切られたことがあって……」

言葉が止まる。
小笠原課長は急かすわけでもなく、ただ私が話し出すのをじっと待ってくれていた。

私が二十歳の時、同じサークルだった一歳年上の先輩、本田剛さんに告白された。
いい人だなと思っていたけど、まだ好きとかそういう恋愛感情は芽生えてなかった。
明るくて人当たりもよく、サークル内でも人気のある先輩だった。
そんな先輩から告白されて本当に驚いた。
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