君に捧げる一途な愛

母から何度も『お姉ちゃんなんだから妹に譲りなさい』と言われ、最初は抵抗した。
でも、いくら抵抗しても私の思いは通らない。
私は諦めを覚え、物欲をなくしてなんでも茅乃に譲る。
欲しいものを欲しいと言えなくなった。
でも、自分の心を守るにはそれしかなかったんだ。

私がなんでも譲るので、茅乃は興味をなくしたのか、絡んでくることなくなっていた。
だからすっかり忘れていたんだ。
なんでも自分の物にするという茅乃の性格を。

茅乃は先輩に近づくと、ふふと妖艶に笑う。

『初めまして、妹の茅乃です。へぇ、お姉ちゃんの彼氏さんですか?カッコいいですね』
『いや、そんなことないよ。茅乃ちゃんもすごく綺麗だね。志乃ちゃんとあまり似ていない気がするけど』
『よく言われます。お姉ちゃんと私は全然似てなくて。お姉ちゃんと付き合ってどのぐらいなんですか?』
『十日ぐらいかな。今日、初めてデートしたんだ』
『そうだったんですね。お姉ちゃんが羨ましいな。こんな素敵な人と付き合えるなんて』
『いや、茅乃ちゃんは美人だから彼氏がいるんじゃないの?』
『残念ながらいないんです』

茅乃は上目遣いに先輩を見上げ、可愛く言う。

『本田さんみたいな人と付き合えたらいいなぁ』

茅乃の視線が私に向き、口許に笑みを浮かべるその表情に嫌な予感がした。

それから二週間後、先輩から突然『別れてくれ』と告げられた。
私の嫌な予感は的中した。
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