君に捧げる一途な愛

「今はその先輩のことは何とも思っていないんです。だけど、裏切られたことが心の奥底に引っかかっていて。分かってはいるんです。私のものを何でも欲しがる妹が仕向けたんだろうと。でも、妹から誘われたぐらいで人の気持ちも簡単に変わってしまうんだと思ったら怖くて……」

次の言葉が言えない。
何を言えばいいというんだろう。

私は常に不安が付きまとっている。
何年たっても、今まで妹から受けた仕打ちは私の心をとらえている。
ずっと黙って聞いてくれていた小笠原課長がゆっくりと口を開いた。

「俺はその人とは違うよ。木下さんを裏切ったりしないし、誰よりも大切にする」

優しく包み込むようなバリトンボイスが私の耳に届く。

私のさっきの言葉は小笠原課長に対して本当に失礼なものだ。
それに私の気持ちも重たいし、面倒な女だと思う。
それでも、怒ることなく真剣に向き合ってくれている。

確かに小笠原課長と先輩は違うし、邪魔をする茅乃もいない。

真っ直ぐに私を見つめるその瞳は、優しさに満ち溢れていた。
小笠原課長の真摯な声色が私の中の不安要素を取り除いてくれる。
それに、何事にも誠実な小笠原課長の言葉だから私の中にすんなり入ってくるんだと思う。

小笠原課長のことは気になる存在として目で追っていた。
先週から距離が近くなり、一緒に過ごしていてすごく居心地がよかった。
何より、小笠原課長のことをもっと知りたいと思うようになっていた。
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