君に捧げる一途な愛
心が動く side政宗
自分のベッドの上で目を閉じて眠っている木下さんを見る。
その姿に愛しさが込み上げ、額にかかっている髪の毛をそっと払い唇を寄せた。
木下さんに知られたら『何もしないって言ったじゃないですか』なんて言われそうだな。
想像したら、フッと笑みがこぼれた。
先日、比嘉部長と何気ない話をしていて結婚記念日だということを聞いた。
その時、『奥さんの後輩の志乃ちゃんが二人で過ごせるようにと気を利かせてくれて啓介を預かってくれることになったんだ。ここで相談だ。政宗は車を持ってたし、志乃ちゃん一人でヤンチャな啓介の面倒を見てもらうのは大変だから手伝ってもらえないか?』と頼まれた。
啓介とは何度か会ったことがある。
『まーくん』と俺のことを呼び、懐いてくれていたから啓介の面倒を見るのは全く問題ない。
今、部長は木下さんといったか?
奥さんの後輩だからか、親し気に下の名前で呼んでいるのは知っていた。
部長に視線を向けると、意味ありげに口角を上げていた。
『お前、志乃ちゃんのことが気になっているんだろう』と言われて面食らった。
どうやら、自分では気づいていなかったが、俺の視線は木下さんを追っていると。
思い当たる節があり、バツが悪くなった。
そんなに分かりやすく彼女のことを見ているわけではなかった。
でも、長年付き合いのある比嘉部長だから気づかれたのかもしれない。
まあ、木下さんと過ごせるきっかけを与えてもらえたんだから比嘉部長には感謝しかない。