君に捧げる一途な愛
中学から高校にかけて身長も伸び、女子から声をかけられることが多くなった。
今まで、俺のことを太っていると揶揄していたヤツが手のひらを返したように言い寄ってくる。
顔はそこまで変わってはないはずなのに、体型が変わっただけでこんなにも違うものなのかと愕然とした。
それでも、思春期というものはやってくるわけで。
異性に興味のある年頃だったし、告白されて何人かと付き合ってみたが、長続きはしなかった。
『小笠原くん、私のこと好きじゃないでしょ』と言われ、別れを告げられる。
相手から求められる愛情を同じぐらい返すことが出来なかった自分にも非はあった。
社会人になってからも、数人の女性に想いを告げられることがあった。
幼少期の体型のコンプレックスで、自分の容姿に自信があるかといえば"ノー"だ。
それなのに、ほとんど会話をしたことのない女性から『好きです。付き合ってください』と言われることに違和感があった。
自分の心が動かない女性とは付き合う気にもなれなかった。
元々、人付き合いは得意な方ではないし、これといって特筆すべき趣味もない。
家と会社の往復、仲間内で体育館を借りてバスケをして身体を動かすぐらいしかやっていなかったので、女性と出会うこともない。
それはそれで問題はなかった。
煩わしい思いをしないに越したことはない。
そんなとき、比嘉部長が『木下さんと一緒に啓介の面倒を見てほしい』と声をかけてきた。