君に捧げる一途な愛
いつも世話になっている部長の頼みを断る理由はなかった。
しかも、木下さんと一緒にというおまけつき。
彼女とは部署が違ったので、社内イベント以降は数回話したことがある程度。
もっと話してみたいと思うことがあってもきっかけがなかったので、これはまたとないチャンスだと思った。
でも、どうして俺を?という疑問を部長に問えば『お前、志乃ちゃんのことが気になっているだろ』と言われた。
別に態度に出している訳ではなかったと思う。
社内では、無愛想で何を考えているかわからないと言われることが多かった。
誰にも気づかれないだろうと思っていたのに部長に指摘され、気まずさに目を逸らした。
週末、比嘉部長の家に行くとすでに木下さんがいた。
ボーダーの服にデニムという動きやすい服装で、普段は下の方で結んでいた髪の毛は耳の高さのポニーテールだった。
仕事での姿とは違って、その新鮮さに年甲斐もなくドキッとした。
俺の顔を見た途端、木下さんは驚いた表情をしていた。
どうやら、俺が来ることを知らされてなかったみたいだった。
『まーくんだ』と部長の息子の啓介がそばにやってきた。
以前、会った時より大きくなっていることに驚き、子供の成長は早いんだなと実感する。
啓介を預かり、公園に向かった。
早速、滑り台を見つけた啓介は木下さんの手を引っ張っていく。
魔の滑り台ループにはまり、木下さんは啓介と何度も滑り台を滑っていた。
木下さんはあんなに無邪気に笑う子なんだな。
俺は部長に送るため、二人の写真をスマホで撮影していた。