君に捧げる一途な愛

俺が木下さんを送ることになったんだが、彼女はタクシーの中で眠ってしまった。
俺の肩にもたれ掛かって。

住んでいる場所を聞いたが、『あっち』とか曖昧な返事しか返ってこなかった。
埒が明かなくて俺の部屋につれていくことにした。

予想外だったのが、木下さんは酒に酔ったらたちが悪いことだった。
いや、俺的には全然いいことだったが、これを他の男にと思ったらイライラが募る。

彼女はふにゃりと笑い、『小笠原かちょーっていい匂いがしますねー』と言って腕を絡めて俺の胸元の匂いをかいできた。
いきなりそんなことをされ、面食らう。
このまま抱きしめて、自分の腕の中に閉じ込めたくなった。
酔った木下さんは可愛さが増し、無防備過ぎて心配になる。

しかも、『どうして連絡してくれないんですか?待ってたのに……』、『やっぱり社交辞令だったんですね』と寂しそうに言う。
俺が躊躇していたばかりに、彼女にこんな表情をさせたのかと思うと情けなくなった。
それと同時に、俺からの連絡を待ってくれていたことに嬉しさが込み上げた。

嫌われていないことがわかっただけでも、俺としては救われた気がした。

酔いが覚めたとき、木下さんに自分の気持ちを伝えようと心を決めた。
あと、酒は飲みすぎないように注意もしておこう。

俺のマンションにつき、寝室に彼女を寝かせると、ネクタイを緩めて一息ついた。
木下さんはきっとまだ起きないだろう。

とりあえずシャワーを浴び、飲み足りなかったこともあり冷蔵庫で冷やしていたビールを飲んでいた。
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