君に捧げる一途な愛
「それもなんか違うだろ。俺の名前、知ってる?」
呆れたように笑う。
「小笠原政宗さん」
私がフルネームで言えば、小笠原課長は眉を寄せたあと、ゆっくりと身体を起こした。
そして、ベッドに横になっている私に顔を近づけてきた。
「志乃」
耳元で囁くように名前を呼ばれると頬が赤く染まり、思わず両手で顔を隠した。
小笠原課長のバリトンボイスが耳に残っている。
こういうのは心臓に悪いからやめてほしい。
顔を覆っていた指の隙間から小笠原課長を見ると、口許に笑みを浮かべていた。
そして、次は私の番だというように見つめてくる。
私も身体を起こし、小笠原課長に向き合った。
なんか、ベッドの上で見つめ合うというのは恥ずかしいものがある。
変な緊張感に包まれながらも口を開いた。
「ま、政宗さん」
そう呼べば満足そうに微笑み、小笠原課長の手が私の両頬を包み込む。
「可愛すぎる。キスしてもいい?」
恋愛初心者の私に気を遣ってなのか、許可を求めてくる。
きっと私の嫌がることはしないということなんだろう。
真っ直ぐに見つめられ、胸が高鳴る。
言葉で返事するのは恥ずかしかったので、私はそっと目を閉じると、唇に触れるだけの優しいキスが落とされた。
それは本当に一瞬だけのだったのに、小笠原課長の柔らかな唇の感触がまだ残っている。
私は物足りなさを感じながら目を開けると、小笠原課長はクスリと笑う。
「物足りないような顔をしてるけど」
そんなことを言われ、表情に出ていたのかと思うと恥ずかしくてたまらない。