君に捧げる一途な愛

あのあと、先に着替えた小笠原課長が近所のパン屋に行ってパンを買ってきてくれた。
私はその間に、借りていた服を洗濯した。

朝食を食べてから、小笠原課長にマンションまで送ってもらった。

「送っていただいてありがとうございました」

駐車場に着いて、私はお礼を言った。
五階建てのマンションの三階に私は住んでいる。
モニター付きのオートロックで宅配ボックスも備え付けられている。
防犯設備もちゃんとしているマンションをお父さんが選んでくれた。

「どういたしまして。あのさ、来週デートに誘ってもいい?」

「で、デートですか?」

デートなんて大学の時以来だから四年ぶり?ぐらいかな。

「そう、デート。駄目?」

「いえ、ダメじゃないです。ぜひお願いします」

張り切って返事をしてしまい、小笠原課長がクスリと笑った。
私が車から降りると、「じゃあ、また連絡する」と言って車を走らせた。
私は小笠原課長を見送ると、部屋に戻った。

手洗いうがいをした後、ソファに座って一息つく。
昨日から今日にかけて信じられないことの連続だった。

ふと、小笠原課長とのキスを思い出してしまい、クッションに顔を埋めた。

仕事で見る表情と全然違い、甘やかな視線を向けられてドキドキしっぱなしだった。
堅物でもないし、無口でもない。
会社で見る小笠原課長はほんの一部だけなんだなと改めて思った。

小笠原課長は私のトラウマごと包み込んでくれる優しさがあった。
私のことを本当に大事に想ってくれている。

私は来週のデートに胸を踊らせていた。
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