君に捧げる一途な愛

「それ、遠藤さんには言うの?」

「言わないつもり。博美に私と付き合っていることを話して、小笠原課長が仕事がやりにくくなったりしたら嫌だし」

博美も誰にも言わないとは思うけど、小笠原課長と同じ部署だし、愚痴ばかり聞かされてる手前、話しにくい。
博美はすぐに態度に出そうだから、私と付き合っていることで小笠原課長に迷惑がかかるのだけは絶対に嫌だ。

黙っておくことが賢明な判断だと思った。

「確かにそうかもね。ついポロっと、なんてことがあったらお互いに困るだろうし」

そう言って由香はコップの中に入っていた水を飲んだ。
とりあえず、由香に報告できてよかった。
あの日、由香がバーに私を連れて行ってくれなかったら小笠原課長と会うこともなかったし、付き合えることもなかったと思う。
由香には本当に感謝だ。
今度、ケーキバイキングでもご馳走しよう。
そんなことを考えていたら、「あれ?」という声が聞こえた。

「志乃じゃん。社食なんて珍しいね」

天ぷらうどんが乗ったトレーを手にした博美が私たちの正面に座る。
その隣には経理部で見かけたことのある女性が座った。

「今日は由香に誘われたからね」

「あー、なるほど」

博美は由香に向かって「どうも」と言って頭を下げた。
きっと、由香と博美の二人きりだと絶対に会話なんてないだろうな。
空気感が違うというか、由香が博美に対して壁を作っているように感じた。

「そうだ、志乃聞いてよ。今日もうちの堅物課長が絶好調だったんだよ」

そう言って顔をしかめる。
うちの堅物課長というのは、間違いなく小笠原課長のことだ。
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