君に捧げる一途な愛
「そりゃ、課長も注意しますよ。遠藤さんがあんな大きな声を出して言うんだから」
朝倉さんが呆れたように口を開くのを見て驚いた。
私と同じことを考えていたから。
「いい加減、私を巻き込むのは止めてほしいんですけど」
「えっ?」
「遠藤さん、いつも私に話しかけてきますけど、時と場合を考えてもらえますか?私、小笠原課長や比嘉部長にも仕事が出来ない奴だなんて思われたくないんです」
私と由香は思わず顔を見合わせた。
話を聞く限りでは、朝倉さんは博美の後輩だ。
だから、博美に向かってそんなことを言うとは思わなかった。
もしかして、ずっと我慢していたのかもしれない。
「あ、朝倉ちゃん……」
「遠藤さんの話は面白いし、聞いていて飽きないですよ。でも、私は仕事をしに会社に来ているんです。電卓で計算している時に話しかけられると本当に困るんです。さすがに先輩だから無視できないので。いったん、手を止めて話を聞いているから、また最初から計算し直さないといけなくて二度手間なんです。あと、小笠原課長が遠藤さんを注意するのは、私が相談したからです」
博美は朝倉さんの言葉にショックを受けているような顔をして聞いていた。
「遠藤さんは相手がどういう状況かを考えずに話しかけてきますよね。無視するわけにもいかなかったから、自分の仕事を中断してとかやっていたら、どんどん仕事が遅れてしまうんです。だから、私は小笠原課長に相談しました」
「そ、うだったんだ。ごめん、朝倉ちゃん」
博美は申し訳なさそうな声で朝倉さんに謝罪していた。