君に捧げる一途な愛

「ねぇ、私たちはなにを聞かされているんだろう」

由香が耳打ちしてきて、それな、と言いたくなった。
私たちの前でやることではなかったのではと思う内容だった。

「いえ、分かってもらえたならいいです。だから、あまり小笠原課長のことを悪く言わないでください。親身になって相談に乗ってくれて、私のために悪者になってくれていたので」

「分かった。本当にごめん。今度から話しかけるときは気を付ける」

「そうしてもらえると助かります」

二人は和解したみたいで、普通にご飯を食べ進めていた。

私は、なぜか朝倉さんの言葉が気になっていた。
もしかして、朝倉さんは小笠原課長のことが好きなのでは……と思ってしまった。
ふんわりとしたボブヘア、目元はタレ目風なメイク、唇はポッテリとしていて可愛らしいという印象だ。

「志乃、行こうか」

ふいに由香がトレーを持って立ち上がる。
私も博美たちが話をしている間にご飯を食べていた。

「あ、うん。博美お先に」

私も立ち上がり、トレーを片付けて社員食堂を出ると、由香が「ちょっとこっちに」と言って廊下の隅に連れて行かれた。

「志乃。あの子のこと気にしない方がいいよ」

「えっ?」

「朝倉さんだっけ。あの子のこと、気になってるでしょ」

由香に言われ、ドキッとした。
どうして分かるんだろう。

「私と志乃の仲だから顔を見ただけで分かるよ。それに職業柄、人の表情をよく見るようにしているから」

由香は私のそばに寄り、内緒話をするように小声で話を続けた。
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