君に捧げる一途な愛
「ちょっと話がそれたけど、志乃が不安になることはないよ。小笠原課長はうちのお兄ちゃんも太鼓判を押すぐらいの人なんだから」
「幸也くんが?」
「うん。あの日、バーの帰りに聞いたんだ。アイツはすべてにおいて優良物件だって言ってたよ。誠実で性格も家柄も人柄もいいって。お兄ちゃんが人のことをあんなべた褒めするのは珍しいんだけどね。あと、小笠原課長は会社とプライベートは全然違って堅物じゃないんだって」
由香があはは、と笑う。
男友達からそんな風に言われるなんて、なかなかないよね。
でも、小笠原課長が誠実なのは知っている。
そこにも惹かれる部分はあった。
もちろん、それだけではないけど。
「小笠原課長のことをもっと聞き出したかったのに、逆に九条さんのことを聞かれたからそこから無言になっちゃった。兄妹で恋愛の話とかしたくないわ。ってこんな話はいいのよ。とにかく、まだ付き合い始めだから気持ちが不安定になったりすると思うけど、そんな時はちゃんと小笠原課長と話し合わなきゃだめだからね。自分一人で抱え込まないように」
「ありがとう。由香も九条さんとの話を教えてよ」
私が笑顔を見せれば、由香は照れくさそうに笑って頷いた。
由香が友達でよかったと心から思う。
「じゃあ、そろそろ仕事に戻ろう。またね」
私は由香と別れ、エレベーターに乗り、操作パネルの《下》のボタンを押し一階まで降りた。
本社を出ると、物流部の事務所に戻った。