祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
 一歩下がりながら、ネイロフは指先で何かの図形を素早く描く。だが、やはり、何も起こらない。
 ネイロフは自分の手のひらを顔に向けて見つめ、やっと事態を理解したらしかった。身を翻し、逃げようとした。
 シルフィスは素早く手裏剣を投げた。
 狙ったのは、ローブの裾から覗いたネイロフの踵だ。
 外す距離ではなかった。シルフィスは、がくりと膝をついたネイロフを、背後から難なく取り押さえた。
 魔法が無効化された魔法使いなど、一般人と同じだ。普段魔法に頼っている分、一般人以下かもしれない。
 そんな無力な魔法使いとの戦いは、いつも女子どもに暴力をふるうような後味の悪さだけ残るのだけど。
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