祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
 雷帝と、異能と異能の戦いになることは、わかっていたつもりだった。
 が、こんなとんでもない神経戦になるなんて、予想していなかった。
 自分と同じ力を持つ相手。互いの攻撃を察知し、干渉し、押し合う。ちょっとでも気を抜けば、相手に雷を支配される。
 ナーザは、幾つかの雷を死体の群れに落とすことに成功した。死体兵の進軍は止まっている。雷帝が動かないからだ。雷帝も雷を支配することに集中しているのだろう。
 けれど。
 不利だ。
 神経が張りつめた糸のようになっている。
 いつ切れてしまうかわからなくて、おかしくなりそうだ。
 雷帝を倒さない限りこの緊張が続く。雷帝を倒すには、自分が雷を支配して雷帝に直撃を与えるしかない。
 けれど、雷帝の力は自分と対等で……甦った死体である彼には、おそらく神経がすり減るなんてことはない。
 ただ魔法使いの命令のままに進軍し、行く手を阻むものを排除するだけで。
 そして、運良く雷帝を倒せたとして、そのあと千の死体兵と戦う力が自分に残っているか。
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