祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
 しばらく沈黙があった。
 シルフィスは唇に笑みを刷いた。体ごとハザンに向き直った。
「では、どちらがどちらの場所に行こう?」
 ふたり呼ばれたのは行き先がふたつあるから。
 ハザンは真面目な顔つきでコインを取り出し、シルフィスへと弾いて寄こす。
「勝った方がレイシアでどうだ?」
「いいよ」
 シルフィスはコインを宙に弾いて手の甲に受け止める。ハザンが言った。
「表」
 ハザンの勝ちだった。シルフィスはコインをハザンに返す。
 ふたりのやり取りを見守っていたクルカムが、封書をふたつ取り出した。
 自分に差し出された封書を受け取って中身を確かめると、地図だった。右下に『エルラド』の文字がある。ちら、と横を見ると、ハザンも地図を広げていた。そちらには『レイシア』が載っているのだろう。
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