祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
苦痛で声が出ない。膝をついてしまいたい。
だが、まだ、詠唱を結んでいない。シルフィスは唾を飲み、ひきつれる唇を動かして、最後の言葉を押し出した。
「……解き放……て……」
『成就』───声が頭に響いた。
地面を染めたシルフィスの血が白く輝き始める。シルフィスは反射的に身をすくめた。またそれが鋭い刃物と化して自分を襲うかと。
そうではなかった。白い輝きが幾筋も静かに立ち上っていった。輝きは次第に撚り合わさって眩い光の柱となった。
シルフィスは目を細めて光の柱を追った。光は音もなく天井に吸い込まれる。それとも、部屋の外へと貫いていったのか。
見つめるうちに、眩しいくらいだった光は地面に近いところから薄れていき、やがて、元通り頼りない松明の明りが照らすだけの部屋になった。
ぼう然として、シルフィスは光が吸い込まれた天井を見つめる。
今の白い光は……?
成就、と誰かの声が聞こえた気がする。
だが、まだ、詠唱を結んでいない。シルフィスは唾を飲み、ひきつれる唇を動かして、最後の言葉を押し出した。
「……解き放……て……」
『成就』───声が頭に響いた。
地面を染めたシルフィスの血が白く輝き始める。シルフィスは反射的に身をすくめた。またそれが鋭い刃物と化して自分を襲うかと。
そうではなかった。白い輝きが幾筋も静かに立ち上っていった。輝きは次第に撚り合わさって眩い光の柱となった。
シルフィスは目を細めて光の柱を追った。光は音もなく天井に吸い込まれる。それとも、部屋の外へと貫いていったのか。
見つめるうちに、眩しいくらいだった光は地面に近いところから薄れていき、やがて、元通り頼りない松明の明りが照らすだけの部屋になった。
ぼう然として、シルフィスは光が吸い込まれた天井を見つめる。
今の白い光は……?
成就、と誰かの声が聞こえた気がする。