祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
☆
藍色の空に半月が浮かんでいる。
シルフィスが儀式の場所に選んだのは、港から少し離れた入り江の砂浜だった。
夜の海辺には、彼ら三人の他に、誰もいない。
海鳴りだけが聞こえる。
柔らかな砂の上に、シルフィスは杖で魔法陣を描いた。その中央に、ナーザがリシュナをそっと置く。
月に照らされたナーザの顔は少し青かった。月の光の加減かもしれない。それでも、ナーザがひどく緊張しているのは間違いなかった。儀式の時刻が近づくにつれ、ナーザは無口になっていた。
もしかしたら、ナーザは儀式の結末を承知しているのではないか──シルフィスがふとそう感じるほどに。
……それならその方がいいかもしれない、と、シルフィスは密かに思っていた。
藍色の空に半月が浮かんでいる。
シルフィスが儀式の場所に選んだのは、港から少し離れた入り江の砂浜だった。
夜の海辺には、彼ら三人の他に、誰もいない。
海鳴りだけが聞こえる。
柔らかな砂の上に、シルフィスは杖で魔法陣を描いた。その中央に、ナーザがリシュナをそっと置く。
月に照らされたナーザの顔は少し青かった。月の光の加減かもしれない。それでも、ナーザがひどく緊張しているのは間違いなかった。儀式の時刻が近づくにつれ、ナーザは無口になっていた。
もしかしたら、ナーザは儀式の結末を承知しているのではないか──シルフィスがふとそう感じるほどに。
……それならその方がいいかもしれない、と、シルフィスは密かに思っていた。