祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
エディアは目を伏せ、テーブルの上で両の拳を握りしめている。
「マクリーンが命を落とした『あの事件』のあと、おまえが難しい立場にいることはわかっていた。城から出してやった方がいい、と忠告してくれる者もあった。でも、私はおまえにそばにいてほしかった。私が守ってやれば大丈夫だと、思い上がっていたんだ」
辛そうに引き結ばれた唇が、自嘲のかたちに歪む。
「おまえには迷惑だったろう。私は、ある意味、おまえにとって母の仇のようなものなのにな。おまえの気持も考えずに我儘を通し、結果、おまえを追い込み、『黒白の書』を奪われ、今回の事態を招いた。すべて私の至らぬせいだ……」
「違う……!」
激しく、シルフィスは彼女の言葉を遮った。
「責任は僕にある」
「私の責任なんだよ。私は、王なんだから」
エディアは顔を上げてシルフィスに微笑む。
冴え冴えと、強い目で。
ひと呼吸おいて、言った。
「……ずっと城を出たかったのだろう?」
出たかった。自分を庇うことがエディアの重荷になるのが嫌で。そして、いつの頃からか、決して自分のものになることのないエディアのそばにいるのが苦しくなって。
なのに、エディアが自分に向ける笑顔を見ると、もう少しだけその笑顔を見ていたくなって城に留まり続けてしまった。
「マクリーンが命を落とした『あの事件』のあと、おまえが難しい立場にいることはわかっていた。城から出してやった方がいい、と忠告してくれる者もあった。でも、私はおまえにそばにいてほしかった。私が守ってやれば大丈夫だと、思い上がっていたんだ」
辛そうに引き結ばれた唇が、自嘲のかたちに歪む。
「おまえには迷惑だったろう。私は、ある意味、おまえにとって母の仇のようなものなのにな。おまえの気持も考えずに我儘を通し、結果、おまえを追い込み、『黒白の書』を奪われ、今回の事態を招いた。すべて私の至らぬせいだ……」
「違う……!」
激しく、シルフィスは彼女の言葉を遮った。
「責任は僕にある」
「私の責任なんだよ。私は、王なんだから」
エディアは顔を上げてシルフィスに微笑む。
冴え冴えと、強い目で。
ひと呼吸おいて、言った。
「……ずっと城を出たかったのだろう?」
出たかった。自分を庇うことがエディアの重荷になるのが嫌で。そして、いつの頃からか、決して自分のものになることのないエディアのそばにいるのが苦しくなって。
なのに、エディアが自分に向ける笑顔を見ると、もう少しだけその笑顔を見ていたくなって城に留まり続けてしまった。