祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
 息を吐いて、シルフィスはテーブルに肘をついた。両手の指を絡めてあごに当てる。
「心の広い男だな、君は。僕なんか、来世こそは絶対に彼女と幸せになりたいと願っているのに」
 シルフィスがそう言うと、ナーザは窓からシルフィスへと視線を戻した。まじまじとシルフィスを見て、聞いた。
「シルフィスの好きな人ってさ、王様?」
 動転した。
「な、何を根拠にそんなことを……」
「二百年生きた女のカンだって、リシュナが言ってた。……俺も妹のこと可愛いし、兄貴も好きだし、別にいいじゃん、って言ったんだけど──お姉ちゃん子もほどほどにした方がいい、ってさ」
 お姉ちゃん子。
 何年も悩んだ気持ちが単語ひとつで片づけられてしまった。
 ……リシュナ、いつか生まれ変わって君に会えたら、ひとこと言っていいかなあ。
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