祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
女は窓の対面の壁の前で立ち止まった。彼女を目で追ったシルフィスは、そこで初めて壁に楕円の姿見がかけてあるのに気づく。
凝った縁取りが年代を感じさせる、かなり古そうな鏡だ。
だが、その鏡面はキズひとつなく、丁寧に磨き込まれていた。
そのつるつるの鏡面に、女性は人差し指を近づけた。触れるか、触れないか。すい、と指を滑らせた。
──いつも魅力的な、ユーリーへ……。
ガタン、と椅子を蹴立てて、シルフィスは立ち上がっていた。女の指先が綴った文字は、微かな光の軌跡となって鏡面に吸い込まれるように消えていく。
……あなたの永遠の友、イストより──と指の動きを止めて、女性はシルフィスをふり仰いだ。
「空文(そらふみ)……」
呟きがシルフィスの唇から零れる。
「……高等魔法じゃないですか!」
女は、シルフィスの感嘆の表情に、満足そうに微笑んだ。
「かの大魔法使い、マクリーン様の直伝よ?」
マクリーン。
思いがけない名前に胸を衝かれた。気がつくと、シルフィスはカウンターへ足を向ける彼女を追いかけていて。
凝った縁取りが年代を感じさせる、かなり古そうな鏡だ。
だが、その鏡面はキズひとつなく、丁寧に磨き込まれていた。
そのつるつるの鏡面に、女性は人差し指を近づけた。触れるか、触れないか。すい、と指を滑らせた。
──いつも魅力的な、ユーリーへ……。
ガタン、と椅子を蹴立てて、シルフィスは立ち上がっていた。女の指先が綴った文字は、微かな光の軌跡となって鏡面に吸い込まれるように消えていく。
……あなたの永遠の友、イストより──と指の動きを止めて、女性はシルフィスをふり仰いだ。
「空文(そらふみ)……」
呟きがシルフィスの唇から零れる。
「……高等魔法じゃないですか!」
女は、シルフィスの感嘆の表情に、満足そうに微笑んだ。
「かの大魔法使い、マクリーン様の直伝よ?」
マクリーン。
思いがけない名前に胸を衝かれた。気がつくと、シルフィスはカウンターへ足を向ける彼女を追いかけていて。