祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
「ご馳走様でした。お幾らですか」
立ち上がり、カウンターに言われただけのコインを置く。
「ありがとう、お兄さん」
「実は、虎退治の話を大通りで耳にして、本人に会ってみたくてここに来たんです」
シルフィスは屈託なさそうに女主人に笑いかけた。店を出る前に、雇い主の話も聞いておこう。
「吟遊詩人には、話のタネが飯のタネなので」
あら、とイストが営業用でない笑顔になる。
「どうだった? いい子でしょ。とても『雷帝』の生まれ変わりなんて思えないわ」
シルフィスの思考が停止した。
「きっとユーリーの育て方がいいんだわ。さすがあたしの親友ね」
と、続けたイストの声も、うまく頭に入らない。
……今、なんて?
「『雷帝』の……生まれ変わり……?」
「あれは本当なのね。人は魂を浄化されて生まれてくるって。ま、そのあとは育ち方次第、生き方次第ってことなんだろうけど」
うんうん、と自分の言葉に頷くイスト。嘘や冗談を言ってるようには見えない。
本当に『雷帝』の転生者がこの町にいたのか? あの少年がそうなのか? ……エルラドが、当たり、だったのか?
立ち上がり、カウンターに言われただけのコインを置く。
「ありがとう、お兄さん」
「実は、虎退治の話を大通りで耳にして、本人に会ってみたくてここに来たんです」
シルフィスは屈託なさそうに女主人に笑いかけた。店を出る前に、雇い主の話も聞いておこう。
「吟遊詩人には、話のタネが飯のタネなので」
あら、とイストが営業用でない笑顔になる。
「どうだった? いい子でしょ。とても『雷帝』の生まれ変わりなんて思えないわ」
シルフィスの思考が停止した。
「きっとユーリーの育て方がいいんだわ。さすがあたしの親友ね」
と、続けたイストの声も、うまく頭に入らない。
……今、なんて?
「『雷帝』の……生まれ変わり……?」
「あれは本当なのね。人は魂を浄化されて生まれてくるって。ま、そのあとは育ち方次第、生き方次第ってことなんだろうけど」
うんうん、と自分の言葉に頷くイスト。嘘や冗談を言ってるようには見えない。
本当に『雷帝』の転生者がこの町にいたのか? あの少年がそうなのか? ……エルラドが、当たり、だったのか?