祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
「どこへ行くの」
つっけんどんに、生首のピンクの唇が動く。まるで見張りのような口調だった。
「……家族水入らずを邪魔するのも申し訳ないので、やっぱりお暇しようかと考えて」
できるだけ丁寧に対応しようとしたのだが。
「ふうん。で、どこへ行くの」
いらっ、とした。
シルフィスは不意打ちに腕を伸ばしてリシュナの髪をつかみ、部屋の中に引き入れた。背中でドアを閉め、彼女の顔を覗きこむ。
「僕があなたに何かしましたか?」
会いしなから敵視して。ささくれた気持ちのまま笑った。凄惨な笑いになったに違いなかった。気持ちを隠さなかった理由が、彼女が人外だということだったら──最低だな、と自分で思った。
リシュナは怯まずにシルフィスを見返してきた。
「あんた、嘘つきの匂いがする」
リシュナをつかむ手の力が緩んだ。リシュナはふわりと浮き上がってシルフィスと距離を取る。
「さっき、ユーリーの占いで、王のカードが出たわよね」
目つきも口調も挑むようだ。
「ユーリーはわざと触れなかったみたいだけど。あんた、王の回し者じゃないの? 雷帝が転生したと知ったら、勇者の子孫である王はナーザをどうするのかしら」
つっけんどんに、生首のピンクの唇が動く。まるで見張りのような口調だった。
「……家族水入らずを邪魔するのも申し訳ないので、やっぱりお暇しようかと考えて」
できるだけ丁寧に対応しようとしたのだが。
「ふうん。で、どこへ行くの」
いらっ、とした。
シルフィスは不意打ちに腕を伸ばしてリシュナの髪をつかみ、部屋の中に引き入れた。背中でドアを閉め、彼女の顔を覗きこむ。
「僕があなたに何かしましたか?」
会いしなから敵視して。ささくれた気持ちのまま笑った。凄惨な笑いになったに違いなかった。気持ちを隠さなかった理由が、彼女が人外だということだったら──最低だな、と自分で思った。
リシュナは怯まずにシルフィスを見返してきた。
「あんた、嘘つきの匂いがする」
リシュナをつかむ手の力が緩んだ。リシュナはふわりと浮き上がってシルフィスと距離を取る。
「さっき、ユーリーの占いで、王のカードが出たわよね」
目つきも口調も挑むようだ。
「ユーリーはわざと触れなかったみたいだけど。あんた、王の回し者じゃないの? 雷帝が転生したと知ったら、勇者の子孫である王はナーザをどうするのかしら」