祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
乱れた髪を、シルフィスはかきあげた。
「何のことかわからないけど」
「二百年生きた女のカンを舐めないで」
「カンでどうこう言われても」
一歩近づくと、リシュナはするりと後ろにさがる。手が届かない位置のつもりだろう。
シルフィスは冷たく笑った。──そんな間合、意味ないよ。僕は手裏剣の名手なんだ。
「ねえ、僕の方こそ、君が不思議なんだけど。なぜ、ナーザのためにそんなに僕を警戒する
の? 君をそんな姿にした張本人でしょ? 恨みはないの?」
「あるわよ。二百年よ? あんたにわかる? 二百年この姿で、見世物や慰み者になってきたのよ?」
「わからないな。それで何故ナーザを守ろうとするのか」
リシュナはきっと唇を結んだ。シルフィスは平然と彼女を見返す。
ここで彼女に同情を寄せたら、そこからボロボロと心が崩れていきそうだった。──じゃあ、君にはわかるのか。愛する人が愛する人を殺そうとした。この僕のために。いっそ気が狂ってしまえれば、どんなに楽だったろう。
「何のことかわからないけど」
「二百年生きた女のカンを舐めないで」
「カンでどうこう言われても」
一歩近づくと、リシュナはするりと後ろにさがる。手が届かない位置のつもりだろう。
シルフィスは冷たく笑った。──そんな間合、意味ないよ。僕は手裏剣の名手なんだ。
「ねえ、僕の方こそ、君が不思議なんだけど。なぜ、ナーザのためにそんなに僕を警戒する
の? 君をそんな姿にした張本人でしょ? 恨みはないの?」
「あるわよ。二百年よ? あんたにわかる? 二百年この姿で、見世物や慰み者になってきたのよ?」
「わからないな。それで何故ナーザを守ろうとするのか」
リシュナはきっと唇を結んだ。シルフィスは平然と彼女を見返す。
ここで彼女に同情を寄せたら、そこからボロボロと心が崩れていきそうだった。──じゃあ、君にはわかるのか。愛する人が愛する人を殺そうとした。この僕のために。いっそ気が狂ってしまえれば、どんなに楽だったろう。