祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
窓の外、ひとりの少年が片手に白いものをかざしていた。ここに来る途中、坂道であった茶色い髪の少年だ。
「手紙! オスカから。キサラの船の船員が、ミッドの港で預かったって」
リシュナから手を離し、ナーザは窓に駆け寄った。
白い封筒を受け取り、礼を言い、互いに手を振る。
窓に背を向けるや、ナーザは手紙の封を切った。文字を追う目が厳しい。
けれど、手紙を元通り畳んだときには、ナーザの一切から厳しさも険しさも消えていた。
静かに張りつめた、決意のようなものだけ残して。
「とにかく、夕飯、食べてよ、シルフィス。せっかく父さんと俺でつくったからさ」
ドアを押しながら、肩越しにシルフィスにかけた声は普通に明るかったが。
部屋を出ていくナーザの肩の上を、リシュナがふわふわとついていく。
この家を出発するつもりだったシルフィスも、思わずナーザを追っていた。
胸が騒いでいた。──今の手紙は何だ。読んでいるとき、明らかにナーザの雰囲気が変わった。
「手紙! オスカから。キサラの船の船員が、ミッドの港で預かったって」
リシュナから手を離し、ナーザは窓に駆け寄った。
白い封筒を受け取り、礼を言い、互いに手を振る。
窓に背を向けるや、ナーザは手紙の封を切った。文字を追う目が厳しい。
けれど、手紙を元通り畳んだときには、ナーザの一切から厳しさも険しさも消えていた。
静かに張りつめた、決意のようなものだけ残して。
「とにかく、夕飯、食べてよ、シルフィス。せっかく父さんと俺でつくったからさ」
ドアを押しながら、肩越しにシルフィスにかけた声は普通に明るかったが。
部屋を出ていくナーザの肩の上を、リシュナがふわふわとついていく。
この家を出発するつもりだったシルフィスも、思わずナーザを追っていた。
胸が騒いでいた。──今の手紙は何だ。読んでいるとき、明らかにナーザの雰囲気が変わった。