祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
 食堂は温かないい匂いで満ちていた。皿を並べているのはダルグで、ナーザは彼に手にした封筒を振ってみせた。
「父さん、オスカから──兄さんから手紙が来た」
 ダルグはゆっくりとナーザに顔を向けた。手紙に目をやり、そうか、と呟いた。
「母さんは?」
「店で占いをしているよ。……呼んできてくれ、ナーザ」
 父親の言葉に、ナーザは頷いた。ダルグはシルフィスに目を転じて、
「こちらに座ってください」
 と、上座の椅子を示す。
「いえ、あの……」
 シルフィスは、ちらり、とナーザの出ていったドアを見る。ダルグは軽く笑い、片手をドアに向けた。
「気になるようでしたら、どうぞ。あなたにも関係あるかもしれませんから」
 少しためらったが、ナーザの後を追うことにした。何かはわからないけど、何かが彼の身の上に起こったのだ。
 ……僕にも関係あるかもしれない?
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