祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
「なんで戦士と魔法使いが……?」
 聞きかけて、ナーザもハッと表情を変えていた。
「夢見の予言が……?」
 そう、夢自体が最初から仕組まれたものだとしたら。
 ぼう然と立ち尽くすシルフィスの腕を、ナーザがつかんだ。
「行こう、シルフィス」
「……レイシアに行くか、エルラドに行くか、決めるコインに、僕は呪いをかけたんだ……僕が当たりを引くように」
 その場を動かず、床を見つめてシルフィスは呟く。
 僕は、ハザンを死地に追いやってしまったんじゃ。
「じゃあ、あんたの呪いは効かなかったんじゃない。レイシアが当たりだったんだもの」
 声が上から降ってきて、シルフィスはのろのろと顔を上げた。緑の目が彼を睨みつけている。
「ぐずぐずしてると、置いていくわよ」
 ……そうだ、ぐずぐずしているヒマは、ない。
 間に合わないかもしれない、が、間に合うかもしれないのだ。
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