祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
夜行
 ダルグに教えられた通りに、シルフィスとナーザは街道に出て北に向かった。ダルグが目指せと言ったトーラは、ハザンが『歌うフクロウ』の魔法使いと落ち合う手筈になっていた町だ。
 トーラに到着したら、最初にギルド『歌うフクロウ』を訪問しよう。そうすれば、ハザンと彼に同行した魔法使いの情報と、レイシアまでの正確な道のりを手に入れることができるだろう。
 シルフィスは無言で馬を走らせ続けた。ナーザは遅れずにしっかりとついてくる。
 嫌な想像しか浮かばなかった。血まみれのハザン。そして、魔法使い。ハザンは胸に、魔法使いは顔に、ぽかりと穴を開けて。
 だが、とシルフィスは自分の想像を振り払う。
 ハザンは優秀な戦士だ。魔法使いも、王宮の仕事を受けるだけの力量があるわけだ。そのふたりが魔法使いひとりにやられるはずはない──ネイロフが『黒白の書』を手に入れているのでなければ……。
 思考は一巡りして同じところに落ち込む──。
 そのせいか、少し遅れた。峠道に潜む気配に気づくのに。
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