モテすぎる男子から、めちゃくちゃ一途に溺愛されています。
Chapter9 「となりは俺なのに」
〈side 果歩〉
「果歩さ、怒ってる?」
週末明け。
1時間目の移動教室に向かいながら、泰生が俺の顔を覗いてきた。
あー、朝からうるさ。
「……怒ってねー」
「うそ。昨日、なんかあった?」
「……だから、」
「あー、湯前先輩が月本さんになんかした?取られそうでイラついてんの?」
「っ、だからお前うるさ───」
「ほんとわかりやすいな〜果歩」
そう言って泰生が肩を揺らしてクククッと笑う。
何にも面白くねぇから。
『わかりやすい』
側からそう見えてるのもいやで。
すべてがムカつく。
「湯前先輩と月本さん、最近いい感じだもんね」
泰生がそう言うことを俺に向けて全部口にするのはわざと。
感情的に反応したら負けだってわかっているのに、
こいつの口から美乃里ちゃんの名前が出てくるとどうしても普通じゃいられなくなる。
今日はそれに加えて湯前先輩の名前まで出してきたから。
黙れなかった。
完全に俺がダサいだけなんだけど。