モテすぎる男子から、めちゃくちゃ一途に溺愛されています。
手に持った購買で買ったパンに目を向ける。
あぁ、あったかい手料理が食べたい。
剛さんのお店に行くのをやめてから、まともなものを食べていない。
目を閉じて浮かんできたのは、美乃里ちゃんの作ったハンバーグ。
最悪。
ほんと最悪。
この俺が、こんなだせぇ人間になるとか。
湯前先輩のそばに立つ美乃里ちゃんを見て、嫉妬と同時に、ずっと心臓うるさいんだから。
隣は俺がいい。
怒った顔も笑った顔も全部、俺が一番近くで見ていたい。
どんなにそう願ったって美乃里ちゃんの中に俺がいなきゃ意味ないのに。
バカだな。
さんざん傷つけておいて今更すぎる。
そんなことは痛いほど自覚している。
初めは、俺にこれっぽちも興味のない美乃里ちゃんにムカつくって感情しかなかったのに。
剛さんの娘だからとか、きっとそんなんじゃない。
知らぬ間に彼女に落ちていたのは完全に俺の方。
「……きっつ、」
喉の奥に何か詰まったような感覚と心臓のバクバクとした音。
苦しさ全部が漏れたような声は、足元のコンクリートに消えた。