モテすぎる男子から、めちゃくちゃ一途に溺愛されています。
連れてこられたのは、校舎の空き教室。
私のクラスの隣のそこは、以前、水牧くんとはじめて2人きりで話して、ファーストキスを奪われた場所。
あの時、人生1番の最悪な日だと、水牧くんなんて大嫌いだと思っていたのに。
まさかこんな日が来るなんて。
それにしても、なんで今こんなところになんか。
ガラッ
扉を開けて教室に入った水牧くんが窓の方へと向かって、
校庭の野外ライブをチラッと見てから、そのまま窓に背中を預けた。
「懐かしいね。覚えてる?美乃里ちゃん」
「……あ、当たり前でしょ。忘れられるわけないよ」
「フッ。俺も。女の子に殴られたの初めてだった」
「……っ、」
殴るって……。
せめて叩いたって言ってよ。
私だって、あんな風に男の子に迫られたのなんて生まれて初めてだったし。
「あ、見て」
「わ、綺麗」
水牧くんが窓の外を指さすから、私も彼と同じように窓に近づいて空を見れば、
くっきり光る満月が見えた。