モテすぎる男子から、めちゃくちゃ一途に溺愛されています。
今目の前にいる人の心臓音とは正直思えない。
だって……相手はあの水牧果歩だ。
緊張とか、ドキドキとかそんなのとは無縁そうな。
平然と人前で堂々と女の子に触れていて、それをなんとも思わないような。
なのに……。
驚いて顔を上げれば、窓に頭を軽く預けた彼がほんの少し顔を歪めて一瞬目線を晒して。
ふたたび、こちらに瞳を向けた。
なにその、恥ずかしそうな顔。
「美乃里ちゃんといると、ここ、ずっとうるせーの」
「っ、」
そんな……バカな。
「好きになっちゃったんだけど。美乃里ちゃんのこと。どーしてくれんの」
「……っ、なっ……」
信じられない。
まさか、水牧くんにそんなこと言われてしまうなんて。
夢、なのでしょうか。
彼のドキドキと速い心臓の音に触れて、からかわれてるなんて思えなくて。
「ねぇ、美乃里ちゃん」
これ以上、優しく呼ばないで。
ううん、もっと呼んでほしい。
もう心の中ぐちゃぐちゃで。
「っ、うっ、」
我慢していた涙が、いろんな想いとなって溢れて。
ぼろぼろと頬に伝って落ちていく。