モテすぎる男子から、めちゃくちゃ一途に溺愛されています。
視界は、目を閉じた水牧くんの顔でいっぱいで。
呆然と、立ち尽くすことしかできなかった。
なに……今の。
甘い香りが広がって。
私から離れた水牧くんが、こちらをまっすぐ見て口を開いた。
「バカはそっちだろ」
彼から聞いたことない、低い声。
「わかってたなら、俺みたいなやつと簡単にふたりになっちゃだめだよ〜」
またその笑い方。
……うそ、うそ、うそだ。
本当に心の底から大切な人と、いつか。
そう思っていたのに。
大事にしていたのに。
「じゃ、これ、俺がまとめて出しておくから。優勝目指して頑張ろうね、美乃里ちゃん」
水牧くんは、私の手からスルリとシートを取り上げると、そう言ってそのまま空き教室を出て行った。