モテすぎる男子から、めちゃくちゃ一途に溺愛されています。
って、水牧くんのことなんてどうでもいいのよ。
一夜明けると、彼のことでいちいちイライラするのもバカバカしいとさえ思う。
冷静に。うん。早くパパの弁当作りに取り掛かろう。
───スッ
いつものように午前6時に家を出るパパにお弁当を渡して、
「果歩くんに優しくするんだぞ」なんて言葉を軽く聞き流して玄関で見送ってから少し。
キッチンで弁当作りの片付けをしていると、リビング奥の襖が開けられた音がして目を向ける。
少し寝癖をつけた、学校では絶対見ることはできないであろう姿。
「……おはよ」
どんなに前日喧嘩しようが、おはようの挨拶は絶対にする。
ママが生きてた頃から、それはうちの決まり。
だから、水牧くんにも同じように声をかけてしまった。いや、悪いことじゃないけれど。
昨日「別に」とだけ吐いて部屋を出た手前、ちょっと気まずい。