猫かぶりなカップル
嘘…。



学食のざわざわが一気に大きくなった。



あたしも、さっきまでの震えもすっかり収まり、ポカンとしてる。



「くるみちゃん、どういうこと…?」



困惑した表情のスズナちゃん達が人をかき分けてあたしに近寄った。



どういうことか知りたいのはあたしの方だ…。



神城を見ると、いつもの王子スマイル。



「僕がずっと好きだったんだ」



そんな爆弾発言をした。



そして、遅れてようやく気づく。



あたしのこと、助けようとしてくれてるんだ…。



「ずっと僕が好きだったんだけど、彼氏とお互い忙しくて別れたって偶然聞いて、弱みにつけ込んじゃった」



神城がそう言って、また笑った。



あたしのプライド、最低限守ろうとしてくれてる…。



スズナちゃん達が、説明を求めるようにあたしを見た。



あたしもなんか言わなきゃ…。



「つらい時期を、奏くんが支えてくれたんだ…」

「くるみちゃん…」

「みんなが前の彼のこと応援してくれてるから、なかなか言い出せなくって…。隠してて…ごめんなさい…」



そう言って涙がこぼれ出す。



演技なのか、本気の涙なのか、もはやわからない。



本気だとしても、あたしが何に泣いてるのか、自分でもよくわからなくって…。



嘘まみれでもうわからない。



一年生の子たちは、バツが悪そうな顔をして、そっとこの場を離れた。



それでも止まらない涙に、スズナちゃん達は「大丈夫だよー、泣かないで、くるみちゃん!」とあたしのところに来て肩をさすってくれた。



「あたし達がはやし立てるから言いづらかったよね!? 逆にごめん」

「ちがっ…」

「くるみちゃんまだいるかなと思って来てみたらこんなことになっててびっくりした!」

「ごめ…」

「ていうか王子とくるみちゃんなんて超~~ビッグカップルじゃん! やばい!」

「そんなことな…」

「いつから付き合ってたの!?」



あたしの言葉全てを遮って、興奮気味にスズナちゃんが聞いてくる。



あ、なんか元気出てきたかも…。
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