猫かぶりなカップル
そして週末、あたしの嫌な予感は的中した。



いつもよりも綺麗にメイクしたママ。



どこか出かけるのかと聞いても、どこも行かないという。



もしかして…。



そう思った瞬間、家のインターホンが鳴った。



「はいはーい!」



ママがそう言って玄関のドアを開けた。



「いらっしゃーい!」

「お邪魔しまーす」



そう言って入ってきたのは、30代半ばくらいのイケメン風の男の人。



ママの彼氏、初めて見た…。



あたしは慌てて立ち上がってぺこっとお辞儀。



その人もあたしのあとに同じようにぺこっとお辞儀をした。



人来るんだったら最初から言ってよ…。



あたし、スッピンに部屋着のままなんだけど…。



「この人、彼氏のいっくん!」



ママがそう言って紹介した。



「はじめまして、穂風ちゃん」

「はじめ…まして」



なんか…嫌だ。



多分悪い人ではないんだろうし、あたしという存在がいることも否定していない人のはずだけど、胸のざわざわが消えない。



そして、ママが衝撃的なことを口にした。



「あたし、いっくんと結婚しようと思って!」

「えっ…?」

「いっくん、穂風のことも丸ごと受け入れるって言ってくれて!」



ちょっと待って…。



今までママはたくさんの彼氏が出来ていたけど、ママが結婚を言い出すのは初めてで。



いきなり、そんなこと言われても困るよ…。



そして、次に言ったママの言葉が、更にあたしを追い詰めた。
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