猫かぶりなカップル
奏に会いに行こうと思った。



教室を出て、奏のクラスへ向かう。



「あれっ、くるみちゃん、王子に会いに来たの?」



教室の入り口にはスズナちゃんがいた。



奏のクラスの子と友達らしい。



「うん、奏くんいる?」

「王子はあっちだよー」



スズナちゃんがそう言って教室の後ろの方を指さした。



奏は、教室の後ろで、前に奏のことを『王子』ではなく『奏くん』と呼んでいた子とまた、仮面を被った笑顔で談笑してた。



そして、その子はまた奏の腕を軽く触って…。



だから、そういうの嫌!



気がついたらずんずんと奏のところに歩いて行ってた。



奏があたしに気がつく。



あたしは息を吸った。



嫌なものは、嫌って言うの…。



「か、奏に触らないで!」



その子があたしに気づくと同時に、あたしは震える声でそう言った。



嫌なものは嫌だと、今のあたしははっきり言うんだ…。



その子は少し面食らった顔をした。



その場にいる周りの人たちも驚いた顔をしている。



奏だけは優しい顔であたしを見てて。



どんな反応をされるか、怖い…。



恐る恐る、でもはっきりと、その子の顔を見つめた。



「あ…ごめんね。そうだよね、嫌に決まってるよね」



その子がそう言った。



その表情は、怒っているでも、軽蔑してるでもない顔。



申し訳なさそうな、そして納得したような顔…。



「ひ、引かないの? あたしがそんなことで怒ってるって…」

「どうして? 彼氏に触られて嫌だって思うのは普通でしょ?」

「でも…」

「むしろくるみちゃんが今まで全然怒らないから、本当に好きなのかなってちょっと調子に乗ってた! あたしがごめん!」



そう言ってその子があたしに頭を下げた。



意外な反応に、あたしはどうしていいかわからない。



スズナちゃんがいつの間にか側に来ていた。
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