猫かぶりなカップル
そして今日、2年生最後の日。



「くるみちゃんとクラス離れたくない~!」

「俺もだよ!!」

「ていうか皆そうでしょ…」



みんな口々に言い合って、あたしのところに寄ってくる。



あたし、アイドルポジションは健在みたいです。



「くるみちゃん、クラス違くなってもあたしのこと忘れないでね!?」

「何言ってんの、忘れるわけないでしょ!?」

「絶対だよ!」



みんなと笑い合って、写真を撮って、ちょっと泣いて。



「くるみちゃん! クラス変わっても関係ないから! 柚子ちゃんと4人で今度ダブルデートしよう!」



そう言う篠塚くんを、「お前が抜け駆けするな!」とクラスの子たちがボコボコにするのを笑って見る。



柚子ちゃんとはまだ付き合ってないらしい。



時間の問題って感じなのに、その「時間」がいつまでも来ないから、もどかしい2人だ。



最後だから一緒に帰ろうと言うクラスの子たちに「奏と2人でいたいから」とその誘いを断る。



だってね、今日は奏の家族と会う約束をしてるの。



終業式で帰るのが早いから、スケジュールの都合をつけてあたしをご飯に連れてってくれるんだって。



すごく嬉しいけど、緊張…。



猫をかぶるのをやめたあたしだけど、さすがに奏のご両親の前では猫かぶっちゃうよ…。



誰もいない教室で、奏と二人きり。



仕事終わりの奏のお母さん…佐織さんが、学校まで車で迎えに来てくれるみたいで、あたしと奏はそれまでここで時間を潰さないといけない。



あたしの席に座る奏に、あたしは前に立って黒板にデタラメな方程式を書く。



「はい、神城さん、この問題解いてくださーい」

「何やってんだよ」

「いいの! はい、こっち来て書いてー」



仕方なく立ち上がった奏が、あたしの隣に立ってチョークを持った。



適当に作ったので答えることは不可能な問題に、奏が適当にそれっぽい答えを書いていく。



「はい! 正解でーす! 席戻っていいですよー」

「正解したのにご褒美ないんですか、先生?」
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