【完】孤独なメイドは執事を独り占めしたい
翌日の早朝。ライアンは部屋で荷造りをしていた。



コンコンコン




「どうぞ」




「お父様。おはようございます」




「アルマか。おはよう。荷造りは済んだか?」




「お父様。お話があります」




アルマの話を聞くために一度、荷造りする手を止めたライアン。




そして、アルマの目を見て話を聞き始めた。




「ボクはお父様とパーニスに行くことは出来ません」




「それは、どうしてだ?」




「ボクはまだ、ここでやりたい事が沢山あって。それを中途半端に終わらせたくないんです。だから....」




本当はお父様と一緒にパーニスに行きたい。でもボクは、ここで育ててくれたオリバー様とベラ様になんの恩返しもしていない。





それとルイス様にボクの気持ちをまだ伝えられていない。これはただのボクのわがままだって分かってる。




だけど伝えられないままここを離れたらきっと、後悔する。




「分かった。アルマがそうしたいなら俺は反対しない」




「お父様...!ありがとうございます」




「そうだ。アルマにこれを」




ライアンは紙袋をアルマに渡した。中にはパンが入っていた。ライアンが焼いたパンだった。




「お父様が焼いたパン。ん?『天使のパン屋』?」



「店の名前だ。お前から取った名前だ」
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