独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
彼女のやるせない思いがひしひしと伝わってくる。

「同情はもっとしないでくださいね。あなたがいてもいなくてもどうせ私は彼の恋愛対象外だと、今までの付き合いで身に染みて知っていますから。友人でよかったんです。自分のせいでそれすら叶わなくなったのが、ばかで笑っちゃいますけど」

自嘲する玲於奈さんを見ているのがつらかった。

ふたりに元の関係に戻ってほしい。

思い違いがあったと知れば、きっと透哉さんも彼女との仲直りを望むはずだ。

「上原先生、真崎さまがいらっしゃいました」

するとそこへ、アトリエのスタッフがドアをノックする音が聞こえた。透哉さんが到着したようだ。

「遅くなってすまない」

彼が個室に入ってくると、玲於奈さんは途端に口を噤んでしまう。

「森窪さんが言っていた通りでした」

私は隣に座る彼に短く伝えた。

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